以前の職場にいるときにお世話になった人が冷蔵庫を買い替えるとのことで、私は古い冷蔵庫をいただいた。
昨日届いたばかりのその冷蔵庫は、届いた直後には他人の家庭の匂いをまざまざと漂わせ、新しい家主を拒んでいるかのように感じたが、今夜扉を開けるとすっかり私の家の匂いに馴染んだようだった。その従順さと、以前より1.5倍ほど広くなったそのサイズ感に心が躍る。
冷蔵庫のスペースの分だけ豊かになったかのよう。
古い冷蔵庫は廊下とリビングの間に置きっ放しで、帰宅して玄関を開けると小さな冷蔵庫が真っ直ぐにこちらを見つめる。
京極夏彦の小説なら、ここで奇妙な物語が始まるだろう。ズボラなだけの話が更新されないように、さっさと行く末を決めてあげたいけれど、どうにも億劫。
空虚に、食材を満たす。
ごちそうさまでした。