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時々思い出す、学生時代の先輩

差し迫って連絡を取る気もないけれど、数年に1度思い出してはあたたかな気持ちにさせてくれる先輩がいる。大学時代に所属したフットサル部の、3学年上の先輩である。

 

彼は国内外問わずさまざまな土地を放浪した結果、もう一度大学生をしていた。当時4年生の段階で、30代前半だったと思う。さすがに若者という雰囲気ではない。しかし、彼の特異さは決して年齢の問題ではなかった。何につけても型破りだったのだ。

 

まだ10年も経っていないが、わたしが大学生になった頃にはすでに、大学のルールは厳格化が進んでおり、構内ではお酒や煙草が禁止されるようになっていた。そんなことは構わず、先輩はそこらへんで煙草を吸っていたが。学祭の時期などは子供も来るので特に注意するものだが、先輩はやはりそこらへんで煙草を吸っていた。あまりにも堂々と吸うので、注意することはナンセンスに思われるほどだった。

しかも、先輩が吸っているのは、背伸びをしたい女性が吸うような、タール・ニコチンの弱めな「ペシェ(現代のペティル)」だった。パステルピンクのボックスから細くて長い華奢な煙草を取り出して、プカプカとふかした。先輩にはわかりやすい格好付け精神がない。会話の途中、吸い殻を何でもなさそうに、ぴんっと指で弾いて捨てた。屈託のない最低さに、笑わずにいられなかった。

 

先輩は英語科に属していた。アイスランドだったか、アイルランドへ留学していたらしい。そのときの生活を聞くと、釣りをして魚を売りさばいて生計を立てていたそうだ。そのような行為は現地では違法だったらしい。話している先輩にとっては、違法だったことなど取るに足らないといった様子だった。

先輩は英語科に属し、教職をとっていた。先輩も教師になるつもりでいる。「この人はとんでもない教師になる」と思ったのはわたしだけではないはずだ。

 

またあるとき、友人からこんな話を耳にした。その友人は大学生にしては希死願望が強く、それを隠さないタイプの青年である。よほどの関係性があっても、暗い話というのはあまり歓迎される類の話題ではないので、彼が死にたがっている話を持て余している人間は少なくなかった。ある日彼は、その先輩にも、死にたい気持ちを打ち明けたそうだ。先輩は「セックスをしろ。おっぱいを揉め」とアドバイスしたらしい。彼にはそういった女性経験も、死にたいと言ってセックスを勧められた経験もなかったため、戸惑ったようだ。そういった戸惑いの気持ちを打ち明けてきたので、わたしも先輩の意見に賛同だと付け足しておいた。

 

あの先輩の大胆さにはいつも感心させられたものだった。この世界のどこかで先輩が教師をしているかと思うと、あの豪快な笑い声がどこかの教室に響いているのかと思うと、わたしはそんな世界が好きだと思うのだ。