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好きな作家

わたしには好きな作家がいる。その作家の本を読むと、わたしはこんな世界を知らないと思う。わたしの中には、こんな世界が存在しない、知らない、と思う。そして、そんな世界が存在するこの世の中のことが少し好きになる。世界を見直すらしい。素晴らしい作家だと思う。

 

以前、その作家は苦手だと言われたことがある。たまたまバーカウンターの隣に居合わせた青年である。面識があった。

 

わたしはわたしで、相手が敬愛する作家が苦手だった。あの作家を良いと言う男は屑だという確信があった。その気持ちを伝えたかどうかまで覚えていない。趣味が合わないというだけの話だ。しかし。


好きな作家の話でナンパをするような奴である。気に入った女の酒には睡眠薬を混ぜるに違いない。彼のような奴は地獄行きに決まっている。
あのシーンを思い出すといつも、わたしは飲みかけの白ワインを一飲みし、バーカウンターでワイングラスを砕き、その破片を彼の喉元に突き刺して回想を終える。

 

わたしたちがあのやりとりをしたシーンが、北野武映画のワンシーンでなかったことを、あの青年は感謝すべきである。