恩返し強迫性・薄情恐怖症

薄情者と思われるのが嫌いだ。

薄情者と思われることを異常に恐れている。

 

恩知らずや恩を仇で返すといった言葉が恐い。人として最もやってはいけない行為と思う。

 

もらった恩を返さないなら、そのまま存在してはいけないと思う。もらったら、とにかく返さなければいけない。それは、人が存在できる最低条件……

 

 

天然ボケだった上司が、本日付で退職した。より条件の良い会社へ転職する。本人にも良いことだ、喜ぶべきことだ。

 

それが、どうか。退職を聞いた時からずっと、気が重い。部下として力不足だったシーン、受けた恩についてばかりが頭に浮かぶ。

 

何一つ恩が返せておらず、特にお礼もできないまま、見送った人間。恩知らず、とんだ薄情者と陰口が聞こえてくるようだ。

 

何度お礼を言っても、何を渡しても、自分が受け取った以上のものを相手に返せた実感がない。

 

その力不足が、非力さや薄情さが、つらい。自分が空っぽになって返すことに嫌気がさすほど差し出さなければ、恩知らずの薄情者という意識が消えない。

 

こんな行き過ぎた気遣いが精神に影を落としているのは間違いない。定時になると上司にさっさと別れを告げて、逃げるようにジムへ。身体を鍛えれば、少し強くなるかもしれないと期待してるのだが、こうやって字面にするとまた自分への問題意識が出てきて、つらみがすごい。