高橋ひとみと、みゆきと、私と悪魔

美容室で、私の席に用意されたファッション誌を開くと、高橋ひとみのコラムが目に留まった。

 

確か、「カラオケと私」みたいなテーマだったと思う。コラムによれば、彼女は恥ずかしがり屋で、仲間内のカラオケでも、人前で歌うのは嫌な質らしい。

 

しかし、ある夜、酔っ払って意識を無くした高橋ひとみは突然「私は『みゆき』よ」と名乗り、俳優仲間とカラオケを大いに楽しんだらしい。

 

それ以来、俳優仲間はみゆきに会うために高橋ひとみを飲み会に誘い、みゆきが仲間とカラオケを楽しんでいるとか。高橋ひとみ本人には、みゆきとして過ごした記憶は残らないそうだ。

 

私はこのコラムを読み、「似たようなものだが、大いに違う」と思った。私もよく、飲んでいる途中で意識を無くす。意識はないが、その間も話したり歌ったり、何となく人間らしく振舞っているらしい。

 

しかし、親友や実の姉は、意識が飛んでいる間の私を「悪魔」と呼ぶ。楽しく飲んでいたかと思えば、気に入らない同席者に絡み出すらしい。

 

何の脈略もない話をしたり、とにかく悪態をついたり、同席者がまともな場合、本当に気が気じゃないらしい。

 

「女じゃなければボコボコにされているレベル」と注意を受けたこともあるし、どこかのマンションの植え込みで寝ていたところを発見されたこともある。

 

本当に幸いなことに、殴られたり乱暴されたりといった経験はないが、人には言いたくない、情けない経験は少なくない。

 

とても最後まで見ていられないのだが、記憶が飛んだ自分を動画で見たことがある。何をそんなに怒っているのか、中指を立てたり、ずっと悪態をついている。

 

その時のことは、膨大な怒りの感情だけ、記憶に残っている。怒りや憎しみに身も心も呑み込まれて正気を保てず、すべてを塗り潰し、破壊し、終わらせてしまいたいという感情が止めどなく溢れる。

 

まさに、悪魔である。

別の名を、アルコール依存症とも言うだろう。一歩手前だと思いたいものだ。

 

人間やめるか、酒をやめるか。

そういった状況であることは、認めておかなければなるまい。