他人のとりとめのない話が生活の中で随分と救いになっている。
YouTubeを垂れ流すこともあったが、最近では一週間を通してラジオを聴くことが習慣化した。
好きな番組も自然と増える。日曜日の夜、月曜日の夜中など、各曜日の各番組が明日を正常に迎えるための手助けをしてくれる。
好きなDJも増える。元々お笑いが好きなこともあり、芸人さんの番組はとくに安心して聴けるので良い。
リスナーを楽しませるという明確な目的がある。
一方で、アイドルものは一切聴けない。彼らはみんなから愛されている自分を語っているので、蚊帳の外の人間にはとても耐えられない。
嫌いな上司の小言よりもずっと聴いていられないのだ。
それにしても、ラジオでは意外な人物の思わぬ一面を発見できる。
クリス松村さんが番組で紹介する曲には芯が通っており、音楽への情熱と愛情を感じるので好感を持った。
そして、アルフィーの高見沢さん。番組を聴く限りでは、彼は好奇心旺盛で行動力があり、博識な人のようだ。
しかし…アルフィーの高見沢さんと言えば、小・中学時代をともに過ごした友人の姿が浮かぶ。
彼女とは小学校4年生の3学期から徐々に仲良くなり、5年生で同じドッジボールサークルに所属したことで急速に仲良くなった。
彼女と私の最強タッグで、ドッジボール大会で関東4位という好成績も残した。
同級生と比べても体の成長が早く、歳の離れた兄姉がいることから随分とおませで、着ている服はいつも洒落ていた。
顔も可愛い彼女は、学校でかなり目立つ存在だった。
ひどく貧乏だが当時は明るく快活だった私は、一度も彼女と同じクラスにならなかったにも関わらず、ドッジボールサークルをきっかけに意外なほど仲良く過ごした。
卒業式には、ふたりで派手な格好をして壇上に上がろうと約束し、実行した。
自分のことながら痛々しく苦々しいが、子供らしくて微笑ましい思い出でもある。
しかし、そんな親友に対して、どうしても不可解な部分があった。
彼女はアルフィーのファンだったのだ。
アルフィーのファンクラブに所属しており、たかみー(高見沢さん)ファンを公言していた。
私たちが小学校高学年の頃なので20年前のことだが、その頃のたかみーはすでに40代前半だ。
当時はGLAYやL'Arc〜en〜Ciel、Hi-STANDARDやMONGOL800などが流行っていた時代である。
そんな時代にアルフィー好きを彼女は公言していた。
私には言葉がなかった。
中学に上がり、私たちは地元の中でも最も校則が厳しいと言われる学校に通っていた。
卒業式でド派手な格好をカマしてノリノリだった私たちは、クラスは別々、学校の中でも最も厳しいと嫌われる先生2トップが担任となった。
歯を見せて笑うだけで生活指導室で何時間も説教を受けるかのような、理不尽で窮屈な毎日だった記憶がある。
そんな環境で、彼女はある日、アルフィーのライブに行くことを理由に学校を休んだ。
実際には病欠を使ったが、アルフィーのライブに行く喜びを同級生に隠せなかった彼女は、クラスの誰かにリークされたらしい。
まんまと怒られていた。
その時も、やはり私には言葉がなかった。
彼女と友達になるまで、私の人生にアルフィーとの接点がなかったのだから仕方がないのかもしれないが、ふた回りどころではない男性グループをどうやったらそこまで好きになれるのかも理解できなかった。
私はバスケ部に、彼女は剣道部に入り、付き合うグループが異なるため段々と疎遠になった。そのまま、今に至る。
風の噂では、彼女は高校生の頃にバイトしたマクドナルドで、同僚だった歳上男性と数年のお付き合いの末に結婚し、二人の子どももいるとか。
私たちの持つ価値観が違っていたこと、それが明確に立ち現れるのが、たとえばアルフィーの高見沢さんを好きになれるかどうかだったのだと思う。
と思っていたが、今長い付き合いの親友らとは好きな芸能人など関係なく好きで付き合ってきたので、アルフィーの高見沢さんはまったく関係ないだろう。
ただただ、私がアルフィーの高見沢さんと言いたいだけで。