悪魔の料理

なんでも冷凍することが癖になっています。

 

今振り返れば空虚でしかない昔の彼氏との思い出から引き継がれた、わずかな習慣です。

 

実家帰省の準備をしながら、賞味期限が切れそうなレバーを下処理もせずにそのまま冷凍庫に入れて早3週間。

 

来週月曜のお給料日まで現金300円弱、PASMOにチャージが300円弱という絶対絶命の中、動物性たんぱく質がどうにか取れないじゃろかと考えていたところ、記憶の中からチラチラとその顔を覗かせていた冷凍庫に潜む凍ったレバーをいつまでも無視するわけにもいかないと、ようやく向き合う覚悟が固まりました。

 

パックごと冷凍したため、あの白くて薄いドリップ吸収シートも入ったままかと思うと、げんなりしてとても料理する気が起きませんでした。しかし、背に腹は変えられません。

パックから凍ったレバーを刮ぎとり、温めたフライパンに落とします。

1つの凍った肉塊となったレバーのその背には、凍った吸収シートの姿が。

徐々に温まればすぐ剥がせるだろうと片面だけ焼いた肉塊にそのまま水を被せ、あとは煮ることにしました。

 

水がお湯に近づいてきた頃には張り付いた吸収シートはするすると剥がれ、生ゴミに落ちます。

 

プクプクとお湯が高温になるにつれてその肉塊は徐々に分裂して本来の姿を現し始め、煮立った頃にはすっかり、本来の姿を取り戻していました。灰汁と血で濁り、ボツボツと泡を立てながら煮えたぎる汁の中に浮かぶ、人間の心臓のような肉塊4つ。 

その正体を見せつけられても怯むわけにはいきません。

私は心臓のようなそのレバーどもを長い爪で摘み上げて、滲み出る汁一滴も残さないつもりで平らげてやろうと思っています