2016-09-01から1ヶ月間の記事一覧

ポケモンGO

先輩2人とともに客先に訪問した帰り道、会社方面に向かうバスの座席に腰をかけるとすぐ、2人はiPhoneの操作を始めた。 仕事のメールチェックかと思い押し黙ると、やがて2人はポケモンGOについて会話を始めた。iPhoneを確認し続ける理由はゲームだった。 確か…

世界最小、祭り囃子

会社から駅までの道程でイケメンサラリーマン3人衆を食い気味に追い抜かした頃、小さな異変に気が付いた。 ほんのり荒い鼻呼吸。息を吸うときに毎回ピーと小さな音が聴こえるではないか。 意識を集中させて数回ほど呼吸を確かめると、これはしばらく鳴ると思…

生きものと気配

道を歩いているとき、野生のゴキブリを見かけることがある。 今年の夏はとくによく遭遇した。今夜で4度目。睨みながら慎重に距離を取る。三歩離れればあとは大抵忘れてしまう。外で見かける野生のゴキブリは愚鈍でのろまにさえ見える。かれらは屋内にいると…

隔離された島

私達は許可なくその島から出てはいけない。 大半の人間が島から出ることなど考えもしなかったし、そのほうが幸せだったのかもしれない。小さな島の崖の際まで使って建てられた巨大な高校は要塞のようだった。 島を出たいと願った瞬間から、闘いは始まる。 木…

お父さんがカブトムシになった話

ああ。いつの間にか秋の気配。 秋の夜長。郷愁。望郷。季節の変わり目は人を切ない気持ちにします。そんな人には、この話。 一瞬で消え去る夏に引かれた後ろ髪を毛根からぶち抜こう。 時代はバブルの後期。都市の再開発が盛んに行われた時分に東京近郊で配管…

やぶかぶれ好奇心

未知なる人間と出会ったときの感覚というのは危機的でドラマチックだ。 襖の隙間から一部始終を覗かせてもらい。一方で、狂気に取り込まれないうちに退散したい。 今日は帰路の途中、空に声を発する妙齢の女性の姿。 「返してよ」 決して小さいとは言えない…