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やぶかぶれ好奇心

人格の中に友達を満足につくれる要素が少ない。万事OKと思う。どうであれ孤独を身にまとって街を練り歩くしかないのだ。

 

気になっていた漫画に手が引き寄せられてページを捲ると、

衣服らしい布で、隠す意図があるのか、ないのか、多くの人間のルールに即さぬ裸人間への好奇心が

作者の目 筆を通して私の中に共鳴する。

 

そういう瞬間、それを享受するために生きていると言っても過言ではないほどに 未知なる人間と出会ったときの感覚というのは危機的でドラマチックだ。

襖の隙間から一部始終を覗かせてもらい、できれば狂気に取り込まれないうちに退散したいと懇願したくなる。

 

漫画と一緒にニヤつく口を閉じ、帰路の途中、空に声を発する妙齢の女性の姿。

 

「返してよ」

 

決して小さいとは言えない女性の声には怒気がうかがえた。

 

「返してよ」

 

少し間を置いてまた、ろ過されないままに女性の感情が吐き出された。

 

女性が改札に入り不穏な行動とともにまた同じ台詞を吐く。その音を遠くに感じたと同時に踵を返し、女性と同じ改札口を通った。

 

「返してよ」

 

ある男性に向けて発せられている台詞であることがわかった。

 

女性は始終同じ台詞を男性に向けて吐いていたが、男性は人波を縫って確実に距離を離していた。

彼女からあの台詞が発せられるたびに、男性の背中からは勘弁してくれという声が聞こえてくるようだった。

 

「返してよ」

 

多くの人に逆行して狭い通路の階段を駆け降りる男性の背中に、再度、女性がその台詞を浴びせる。

 

男性を追って女性も足早に階段を駆け降りる。と思われた瞬間に女性はくるりと向きを変えた。その足取りは改札を出る覚悟をした歩みであった。

 

思わぬタイミングで終わったストーリーを滑らかに終わらせるため、男性が降りた階段を駆け降りる。

勘弁した。勘弁するんだ。そのような思いにしばし捉われた後、いつもの帰り道が戻った